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睡眠時無呼吸症候群

【睡眠時無呼吸症候群】

睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome: SAS)では、上気道が狭くなることによって無呼吸や低呼吸等の呼吸イベントが睡眠中に繰り返し生じます。この呼吸イベントにより睡眠が分断され、日中の過度の眠気が引き起こされます。
性別でみると、男性のほうがSASにかかりやすい傾向にありますが、閉経後の女性はホルモンの分泌量が大きく低下し、男性と同程度まで睡眠時無呼吸症候群になりやすくなるので要注意です。

【原因】

SASの原因には物理的に上気道が塞がれてしまう「閉塞性睡眠時無呼吸タイプ(OSA)」と、脳の指令が途絶える「中枢性睡眠時無呼吸タイプ(CSA)」があります。このうちOSAが睡眠時無呼吸症候群の9割を占めています。
OSAの原因は空気の通り道である上気道が狭くなることが原因です。特に内臓脂肪型肥満は上気道を狭くする原因として重要な要素です。また、扁桃肥大、舌が大きいことや、鼻炎・鼻中隔弯曲といった鼻の病気も原因となります。あごが後退していたり、あごが小さいこともSASの原因となり、肥満でなくてもOSAになります。

【症状】

睡眠中のいびき・窒息感・あえぎ呼吸、日中の眠気や起床時の頭痛、集中力の低下などを認めます。

【診断】

睡眠ポリグラフ検査(polysomnography; PSG)による睡眠中の呼吸状態の評価が最も標準的な検査ですが、PSGを施行できる施設は限られており、自宅で検査可能な検査施設外睡眠検査(out of center sleep testing;OCST)による簡易検査がその利便性・簡便性のため現在広く普及しています。
検査の結果は、睡眠1時間当たりの無呼吸と低呼吸の合計回数であ無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index; AHI)という指標をもとに見ていきます。これに加え、日中の眠気などの自覚症状がある場合、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
・5未満: 睡眠時無呼吸症候群ではない
・5~15: 軽症
・15~30:中等症
・30以上:重症
重症度に応じて、以下のような治療計画を立てます。

[AHIが5未満]

特に治療はしませんが、肥満の方は減量で病気を予防しましょう。

[AHIが5以上]

精密検査を行い、睡眠時の体の状態をさらにくわしく調べます。

[AHIが40以上]

明らかに重症なので、すぐに治療を開始します。

精密検査が必要と判断されたら、医療機関に一泊入院して、ポリソムノグラフィー(PSG)という検査を行います。

【治療】

1)減量

減量手術に関しては、BMI35kg/㎡以上の肥満症で、高血圧症、糖尿病、脂質異常症またはOSAのうちひとつ以上を合併している方に対して、6カ月以上の内科的治療を行っても十分な効果が得られない場合、腹腔鏡下スリーブ胃切除術の保険適応となります。

2)口腔内装置(Oral appliance;OA)

睡眠時(特に仰向けで休んでいるとき)は下顎が下方に沈みそれによって気道が閉鎖され、いびきや無呼吸が起こるため、上下顎の歯列にマウスピースを装着することで、下顎を前方で固定させ、気道を確保します。
軽症~中等症の方で、画像検査にて下顎が後退しており、上気道が狭いことが判明している場合に効果が期待できます。

3)経鼻的持続陽圧呼吸療法(Continuous positive airway pressure:CPAP)

寝ている間に専用のマスクをつけ、外気を取り込み加圧した空気を鼻から送り込むことで、狭くなっている気道を広げ、睡眠中の無呼吸を防ぎます。
OCSTでAHIが40以上であれば、CPAPの適応となります。AHI40未満の場合はPSGによる精密検査が必要になります。PSGの場合はAHI20以上がCPAPの適応となります。

【予後】

OSAと高血圧は互いに合併率が高く、OSAの約50%に高血圧症が、高血圧症の約30%にOSAの合併がみられます。また、低酸素・高二酸化炭素を繰り返すこと、一過性低酸素と再酸素化による酸化ストレスと炎症反応の亢進で血管内皮機能障害・動脈硬化の進展を来すことなどを介して心血管障害を来します。CPAP治療は、これらのリスクを低下させることが明らかになっています。

睡眠時無呼吸症候群の診断と治療のアルゴリズム

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